落とし物箱

出会っちゃった人たちの話がしたい

不器用でも精一杯に




あれだけロミジュリの話をたくさんしておきながら、まだ話し足りない。ので話足りないこと全部話そう、という意気込みで勝手に1人で楽しい時間にするだけのブログ。つまるところここは自己解釈と妄想の塊。(以下、名前など正式に話してると余計に長くなるので基本的に省略させてもらってます。) 私はもうロミジュリを知らなかったあの頃の私には戻れないし、平マキュを知らなかった私にも戻れない。

物語、各キャストさんについてはこちら
sknznznzn.hatenadiary.jp




なんでこんなにハマったんだろうって考えてたんですけど、若さ故の煌めき、みたいな。若さだけで突っ走ってしまう物語、めちゃくちゃ刺さるし大好きだったことをロミジュリ期間中完全に忘れてた。大人に振り回されてはいるものの、若いから自分の感情に盲目的で、自分を抑えられなくて、周りが見えなくて、走り出してしまう。不安定さが創り出す関係がより"若さのもたらす強さ"を感じて命の尊さとか、儚さとかが煌めいて心に刺さる。ここに出てくるキャラクターはみんな不器用でそれでいて真っ直ぐで。全力で生きてる若者のお話。
当初の予定ではロミジュリにこんなハマる予定じゃなかったんですよ、なんなら苦手だったらどうしようくらいに構えてた。けどこの物語の持つ若者の強さに惹かれたんだと思うと本当に出会えてよかった!って一言に尽きますね。

個人的ロミジュリベストアクトは3/8ソワレと4/3、4/7でした。どの公演もそれぞれに違った顔を見せてくれていたんだけど、その中でもマキュのロミオへの気持ちが強く出ている回が好きみたい。ロミオへの気持ちが強くなればなるほど、自分への傷つけ方が大きくなっているようで。4/3の公演を収録してくれてありがとうございました!私が見た中であの日だけが唯一ティボに敗北した日だったんですよ。敗北って何って思うかもしれないけど、マキュがティボに負けるんだよ。あれがまた見られるの、世界すごい。そして願うはそのままカテコが映像で残ることですね… あの日の興奮は忘れない…… 引きの悪い私が推しのカテコを引けた奇跡…… ちなみに特別賞*1は3/24 ソワレです。あの日のマキュはなんだったんだろうね…… とても好きです。




《目次》




1.世界の王は俺たちなんだ

世界の王ブリッジ、初めて見たときこのシーンは必要か?って思ってた自分がいたけれど、平間くんを推していて、目の前ですごいものを見せてくれていることに気がついて最速ご褒美タイムとなりました。ありがとう。世界の王ブリッジ大好き。(単細胞) そしてマキュだけ踊らない選択肢もあったはずなのに最後までやり遂げてくれたまりおくんにはとても感謝してます。ありがとう。みんな一緒のセリフはあるものの、ほぼほぼ無音ダンスみたいなことしてるから、それを普通にやりきってしまう平間くんにこの人のダンスと表現をもっと見ていきたいと改めて思ってしまうんだな。「どこだロミオ、どこだロミオあ〜どこだ〜」で顔あげた時のTHE平間壮一のお顔が可愛いくて、なんでも好きなものあげたくなっちゃうね!

大阪中盤くらいから平マキュちゃんの「お前ら(ロミオを)探せ〜」が可愛い日替わり入れてくれたので私のリサーチできた範囲のまとめ。(抜けがあったら誰かこっそり教えてください)

3日 :「一生懸命探せ〜」
7日 :「適当に探せ〜」
10日 :「甲高い声で探せ〜」
12日 ソワレ :「低い声で探せ〜」
13日 マチネ :「素早く探せ〜」
14日 :「可愛く探せ〜」

……マキュちゃん、可愛いな………

マキュのお話をしたいと思うと必ずつきまとうのが彼の家柄の話。彼は大公の甥なのでモンタギューの血が流れていない。そんなマキュが大きな声でモンタギューを名乗っているのは、自分が誰よりもモンタギューであろうとしたからで。だから必要以上に家柄、血縁というものを気にするし、それでもモンタギューでないマキュはロミオとベンに対して見えない壁を感じている。2人に対して「お前らマブダチだろ?」って言葉をかけるマキュはマブダチには入れていないと思っているのか、本当の意味でのマブダチにはなれないと思っているのか。

マキュ:そんなんで、モンタギューの跡継ぎが務まるのか?

ふとした、ふざけているような時でもロミオの立場と家のことを口にするマキュはモンタギューとロミオの未来を大切に思っているからで。マキュは自分の選択でモンタギューにいることを決めた。ただモンタギューにいるだけではなくて、跡継ぎであるロミオを支えることでここに存在できていると自分に課している。だからクドすぎるくらいに家の名前に執着する。自分はどんなに大きな声で叫んでもモンタギューにはなれないから。これがマキュがいちばんロミオとベンに大きな壁を感じているところでもあって。

ベン:いいや、ロミオはヴェローナの帝王になるんだ。心優しい王様にな
ロミオ:いいや、王になるのは、俺たち全員だ

このベンの言葉に笑顔を浮かべきれないマキュは大公の家の者だいうことを忘れてなんかいない。それでも、ロミオとベンと一緒に「大人に負けない、この世界は俺たちが創る!」と3人が胸を張って真ん中に立って笑顔で叫ぶ姿に新しい世界を切り開いていける力と希望が溢れ出ている。ロミオとベンと3人でそんな未来を作りたいから、マキュはモンタギューにいるんだろうな。眩しいくらいに輝く3人と仲間の笑顔に、ふと感じたマキュの気持ちの揺らぎすら消されてしまう。3人が揃った時のパワフルさとか、馬鹿さ、くだらなさがモンタギューを支えているもののひとつだから、ロミオもベンもマキュもみんなモンタギューに必要で大切な存在。それにマキュは気がつけていないのかもしれないな。知らんけど*2だから大きな声で叫び続ける…… マキュってめちゃくちゃしんどい……






2.マブの女王って何者なんだろうか

ロミジュリのパンフレットを見ながらそれぞれの曲のタイトルに目を通しているとどうにも腑に落ちないタイトルの曲があって。それがマブの女王でした。
世界の王のあと、ロミオ、そしてモンタギューの仲間をマキュがキャピュレット家で行われる仮面舞踏会に誘う曲。この曲のタイトルってどうしてマブの女王っていうんでしょうね。
そもそも、マブの女王とは__

アイルランドイングランドの民話で人の夢をつかさどる妖精

と言われております。
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」の中でマキュのセリフとして出てくる言葉。この戯曲の中でキャピュレットの舞踏会へ行くのに気分が乗らないロミオを説得する時のマーキューシオのセリフに出てくる。マキュのみた夢の話。その話を始める時に「マブの女王と一緒に寝た」という。そしたらこのマキュの曲って夢の話なのか?と思うけれど夢の話ではない。でも今起こっている現実の話ともまた違って、未来の仮面舞踏会の話をしている。結局は仮面舞踏会で女を落とそう、ロミオももう少し恋で遊ぼうよっていう話で、マキュのおたく的にはご褒美タイムでしかないんですけど。どうしてこの曲のタイトルがマブの女王って言うんでしょうね…(2回目)
そんなこと考えてたらロミジュリの公演中に本屋さんでこんな本を見かけました。読んでみると結構面白かった。

「決定版 快読シェイクスピア(新潮文庫)」
www.amazon.co.jp

ここでこの本の紹介しておいてどこまで内容に触れていいのかわからないからあんまり触れません。でも気になった人いたら読んでみてほしい!マキュの解説めっちゃしてくれてて平マキュのアンサーをみた気分になれるよ!(笑)
これを読んで、マキュが感じているマブの女王への気持ちが面白いなと思った。マキュはマブの女王が好きなのか嫌いなのか。「マブの女王と寝る」とはどういうことなのか。このミュージカル ロミオ&ジュリエットに関してのマブの女王と戯曲のマブの女王の立ち位置って全く同じではないけれど、これを読んだあとにロミジュリを見ていたら、”マブの女王と寝たことがあるマーキューシオ””マブの女王と寝たことがないロミオ”というマキュの感じているロミオとの壁がまたみえた。マブの女王に対するマキュの気持ちは好きでもなくて嫌いでもなくて。もしかしたら死のような存在として見えていた、感じていたのかもしれない。見えない者に対する恐怖みたいな感覚。それがマキュにとってのマブの女王。その場に1人でいるのが怖いからロミオを連れていきたくて。仮面舞踏会に誘ってロミオが答えを出すまでの短い時間、すっと真顔になるマキュ、「必ず来いよ」と念を押す姿にロミオにも自分のいる世界に来てほしかったのかもしれない。こういうところに楽しい時間の中でもマキュの抱えている孤独をふと感じる。
マキュからの誘いを受けてロミオが感じている見えないものへの恐怖を口にするのが"僕は怖い"で。これはマキュが感じていたマブの女王と感覚が似ているもの。マキュはマブの女王として感じていたものがロミオには影のような暗いものとして感じている。ロミオの「愛を光のように待ちわびる明るい陽の顔」とマキュの「争いの中で憎しみの気持ちを募らせる陰の顔」。それがここのマブ~僕は怖いの間は、それぞれが感じている見えない”何か”に対してマキュの「楽しく、華やかなもの(=マブの女王)として語る陽の顔」とロミオの「黒い影のような恐ろしいもの(=死)と感じている陰の顔」と逆の感情で写し出されている。ロミオとマキュ、同じ場所にいるようでいなくて、いないようでいるように感じるのはこういうところなのかもしれないな。






3.真っ直ぐな目を向けて肯定するほど儚く散っていく言葉たち

ロミオが神父様にジュリエットとの結婚式を挙げてほしいとお願いをする時の曲「愛の為に」。ヴェローナの街でモンタギューやキャピュレットの家どちらかに偏ることのない神父様だからこそ見えているものがたくさんあって。争いの続くヴェローナの今、そして未来を予言しているような神父様の言葉に対して真っ向から「愛があれば」と説いていくロミオの姿にこの結末を知っているからこそ聞いていて辛くなってしまう。もちろん、神父様はロミオのことを思ってかけている言葉たちなんだけど、偏屈な聞き方をし始めてしまったらこんなにヴェローナの若者たちのことをわかっているのに、どうしてこんな結末になってしまうのだろうとひたすらに辛くなるだけだった。「愛故に」という言葉がこんなに牙を向くとは思わなかった。そんな偏った聞き方をしてしまった話です。

愛故に人は 道を誤る
愛なしで人は生きていけない

マーキューシオの選んだ道は正しかったのか、間違っていたのか。それは誰にもわからないことだし、誰よりもマキュ自身がモンタギューの家の名をロミオの代わりと言ったら聞こえが悪いけれど先頭に立って叫び、そして戦っている。そんな彼の選択は正しいことではなかったのかもしれない。それでも、ロミオのそばで守るという愛があるからこそ、この道を選んでいる。
それに対してロミオは首を横に振りながら笑顔を浮かべて答える。「愛なしで人は生きていけない」ことがわかっているのに、マキュからの愛に気がつかずに走った結果、ジュリエットよりずっと一緒に近くにいたはずの人を亡くしてしまう。ジュリエットなしでは生きていけないのと同じようにマキュもロミオなしではもう生きていけないんだよ。

愛故に人は 悩み苦しむ
彼女のためなら死んでもいい

ジュリエットへの気持ちを隠しながら、キャピュレットの跡継ぎとして必死でその場所に立っているティボの葛藤は彼女への、そしてキャピュレットへの愛があるから。どこかに今の自分の居場所に疑問を感じていたりもするけれど、それを隠してキャピュレットにいる彼は現実と理想の間で苦しんでいる。
血、家柄というものに縛られているティボと、名前、そして命すらも簡単に捨てると言えてしまうロミオにこの2人の間に大きく隔てる"自由"という壁の大きさがみえてくる。ロミオが必死に想いを告げれば告げるほどティボがより孤独に哀しく写ってきて辛い。

愛故に2人は 重荷を背負う
彼女のためなら 何も怖くない

最終的にロミオを死なせてしまうきっかけを作ってしまったベンヴォ―リオ、そしてジュリエットの想いをわかっていながらパリスとの結婚を勧めてしまったせいで彼女を死なせてしまうきっかけを作ってしまった乳母の2人。この物語の結末は両家の和解で終わるけれど、生き残った人たちの生活はこれからも続いていくわけで。ロミオとジュリエットを死へ導いてしまう鍵を回してしまったことをこれから重荷として背負っていかなければならなくなる。この行動も2人はそれぞれロミオ、ジュリエットを想ってかけた言葉であり行動で。愛があったからこそかけた言葉であって。そんな重荷を背負わせてしまう恐れすら感じていないロミオが真っ直ぐで純粋で。
それぞれヴェローナの若者にある葛藤だったり苦しみを真っ直ぐな目で愛があれば乗り越えられると言葉を紡ぐロミオにロミオとジュリエット / ベン、マキュ、ティボ、乳母の抱えるものの壁を感じて辛くなる。ロミオがジュリエットのことを想って時に天使のような笑顔を浮かべながら真剣な眼差しで神父様に言葉を投げかければ投げかけるほど、一緒にいる仲間とその未来を真っ向から手放してしまっているようにみえて辛い。

2人の愛が実った時 この街にも訪れるだろう
平和が 愛故に

2人の愛が実った時にはロミオの願い通りヴェローナの街に平和が訪れる。ただその街にはロミオはいなくて。ロミオの夢見た世界はロミオが見ることができないと思うと、この曲、未来の平和と愛を願う明るく前向きな曲のはずなのにどこかロミオとは住んでいる世界が違うような曲に聞こえてしまうんだ。






4.綺麗は汚い、汚いは綺麗の景色

タイトルをここまで書いてしまうとロミジュリなのかマクベスなのかわからなくなるの、単純に面白いよなあ。個人的に、年末までステアラでぐるぐるしていたのでUFOのくだりあたりからなんだか不思議な世界にきたような気分で観てました。「綺麗は汚い、汚いは綺麗、ただし俺以外!」って半年強聞いてきて、まさかヴェローナでも聞けるなんて思ってなかったからね。ロミジュリのお話です。
この歌詞がまたロミジュリの世界観に合っていて。まさに、綺麗は汚い、汚いは綺麗、ただしロミオとジュリエット以外!なんだよな。
ロミオを訪ねてくる乳母に対して俺がロミオだ!というベン、マキュ、モンタギューの仲間たちの姿にこうやってロミオは自分が知らないところで仲間に守られていたんだなと感じる。みんなにとってロミオは世界の王であって、大切にされていた。ロミオには「綺麗は汚い、汚いは綺麗」の世界を見せないようにしていた。ロミオにとって綺麗なものは綺麗で、汚いものは汚い。その世界でしか生きてきていないから。それで良い。良いことは良いし、悪いことは悪いこと。純粋にそれを信じて生きてくれれば良い。そして「綺麗は汚い、汚いは綺麗」の世界が見えるのは俺たちだけで良いと思っているベンとマキュも格好良くって。これがごく普通のモンタギューの日常のことで。ベンがSNSを見ながらくだらないなって笑うマキュの姿、目新しいものがあると誰よりも早く飛びついてしまうマキュ。ベンもマキュも普通の若者で青年なんだよな。背負っているものが大きすぎてたまに忘れてしまう。
恋や愛は簡単に冷めるもの、と言いながら、盲目な恋を痘痕のえくぼと例える。それだけロミオのことを落とすのは難しいとみんながわかっているから言葉にするけれど、乳母だけはロミオが恋に落ちていることを知っているのが寂しくも見える。誰にも相談せずにジュリエットとの結婚を決めたロミオだから、彼がそんなに大きな恋をしていることすら知らない。乳母から聞かされていても信じられないのもまたロミオをよく知っている仲間だからで。それでもベンとマキュに相談せずに話を進めてしまうロミオは気がついていないところで少しずつ2人と距離をとってしまっているんだよな。






5.鏡合わせのような2人 〜平マキュとヒロティボのお話〜

この2人を見ていると、鏡合わせのようにお互いが自分の姿を相手に写してその姿に憎しみや怒りという感情を向かわせているようにしか見えなくて。平マキュとヒロティボ、見れば見るほど双子みたいに、同じ時を一緒に過ごしてきたかのような親友のようにみえてしまう。それくらい、執着しているものだったり仕草、感情のベクトルがそっくりで。つまるところここは私の純度100%の妄想の話です。

マキュは大公の甥って話(n回目)は色んなところでしてるからいいとして。ティボはキャピュレット夫人の甥なんですよね。キャピュレット卿がキャピュレット家の本筋である、と仮定*3して考えるとティボは跡継ぎとは言われているけれど本筋のキャピュレットの血は引いていない。キャピュレット夫妻の間に男が生まれなくて、キャピュレット卿の親戚に男がいなかったからティボルトがキャピュレットの跡を継ぐしかなかった。本来なら自由に過ごせたはずだったのに、結果として家柄、血縁というものに縛られざるを得なかった。

復讐の手先になんか なりたくはなかったんだ

子供の頃に思い描いていた未来の自分とその描いていた未来にいる全く違う自分。キャピュレットの跡を継ぐということは、すなわち憎しみの矛先であるモンタギューを倒さないといけないことで。大人に振り回され、そして大人の駒になってしまったことを感じて"復讐の手先"という言葉でしか自分を表現することができない。それでもモンタギューをみると拳をあげ、ナイフを掲げてしまうティボは大人に作り上げられてしまったティボルトなんだよな。ううう、ティボルト…し、しんどい……

奴は俺を昔から 蔑み憎んでる
格好つけた臆病者 残忍な人でなしだ

自分の家だけに縛られることがなく、自由に選択をしてモンタギューにいるマキュと、選択肢すらなくキャピュレットの跡継ぎという大きなものを背負わされてしまったティボルト。マキュは自分もいつかは1人で上に立つ人間にならないといけないと思っている未来の自分の姿をティボに写し、ティボは自由に生きることができていれば、と理想の自分をマキュに写している。お互いの姿をお互いに写し合ってはその姿と現実の自分との違いに嫉妬し、憎しみという気持ちを募らせた言葉たち。
この"昔"の示す過去が平マキュとヒロティボになると遠い昔の話ではないように聞こえたのはきっと2人はお互い家柄にも血縁というものにも縛られることがなく、親友のように仲良くしていた頃があったからなんじゃないかな。それがキャピュレットの跡継ぎがティボにということになってしまったことでいきなりティボは大きな荷物を背負わされてしまった。そのせいでマキュと距離ができたのかもしれない。知らんけど。
2人のナイフへの執着の仕方が似ているのは昔遊んでた頃のおもちゃがナイフだったのかもしれない。少し大人になった今そのナイフは自分と、そして家を守るため、また自分を落ち着かせるためのものに変わっていて。街に噂がで哀しみ悔しさが募ってくるとすぐにナイフを取り出し見つめるマキュの姿。本当の俺じゃないでナイフを握りしめながら崩れ落ちるティボの姿。2人とも何かあった時にすがる場所が同じで。
双子のように似ていると思うのも、それぞれの仕草があまりにそっくりだったから。「憎しみ」でモンタギュー夫人の話を面倒くさそうにするマキュが耳の穴をほじるような仕草をするけれど、ティボもキャピュレット夫人に対して同じ仕草をする。また、次から次へとナイフを出して見せるマキュに対してティボはナイフをじっと見つめる。

マキュとティボがそれぞれ大切にしている相手がロミオとジュリエットなのもまた鏡に写し合わせたように似ていて。彼らにとっての光はロミオとジュリエットであったから、それを守るように自分を犠牲にしている。また、もしかしたらマキュがロミオに対して抱いている感情、そしてティボがジュリエットに対して抱いていた感情をマキュもティボもそれぞれ知っていたのかもしれない。そんなたわいもない話ができるくらい仲が良かった。そして出てくる決闘での言葉の数々。マキュに対して「飼い犬」「壊れたロックシンガー」と例えるティボはマキュのことを良く知っているからこういう例えができるわけで。モンタギューの家の者でもないのに先頭に立って高らかとモンタギューを名乗るマキュはロミオ(モンタギュー)の飼い犬でしかなくて。誰よりもモンタギューでいようとしたマキュは大きな声でその家の名前を語り、誇りを持つことでモンタギューでいることができたから、とにかく大きな声で言葉を並び立てていた。その姿が「壊れたロックシンガー」にティボに写るのも、マキュの神経を逆撫ですることもわかった上での言葉で。マキュに対する最大の皮肉で。実はそんな風に生きられるマキュが羨ましい。それに対してジュリエットへの気持ちを知っているからこそ「実の叔母とできてるとか?」という言葉をかけるマキュも同様で。お互いのロミオ、そしてジュリエットに対する気持ちが同じだからこそ相手に自分が写ってしまう。この2人の決闘はもちろんマキュとティボで戦っているところもあるけれど、それ以上に自分自身と戦っているようにも見えるんだ。
ティボのことを罵るマキュはティボに対して、ジュリエットの近くにいながら自分の気持ちを伝えることができずにここにいることを臆病だと言っていて。

臆病なのはお前だろ
ずる賢く逃げるのか お友達の説教聞いて

ティボはマキュに対して自分の家ではなくてモンタギューにいることしかできないこと、そしてロミオのことを思うのにいっぱいいっぱいで空回りすらしてるような姿に臆病者という。ただそれぞれの臆病さをいちばん自覚しているのは他でもない自分自身で。だからこそ自分に向かって吠えているようにも見えて、言葉にすればするほどに相手よりも自分へのダメージの方が大きくなってしまう。「お友達の説教」と口にするティボは自分にはない環境へのマキュの僻みにも聞こえて。マキュとの間にあった何かがきっかけで、新しい環境で友達を作ることができたマキュと作ることができずにひとりキャピュレットの跡継ぎになるためだけに孤独に生きてきたティボ。彼にとって必要だったのは友達の存在だったのかもしれないな。

誰もが自由に生きる権利がある
誰もが自由に生きる権利などない

「誰もが自由に生きる権利がある」と言える家で過ごしたマキュは、彼なりの正義を通して自由に生きれたわけで。そしてティボはキャピュレットの跡を継がないといけないとわかった時にはもう彼には自由がなくなっていた。むしろ、「誰もが自由に生きる権利などない」と思わないとそこにはいられなかった。ティボはもう地獄の底から叫ぶしかできることはなかったんだよな。


この2人の決闘が単純に好きだった。こんなに決闘から痛みを感じるとは思っていなかったから。自分を犠牲にしながら戦うマキュとティボはとても格好良くて。マキュとティボが仲が良かったのにこんなに憎しみ合う関係になってしまったのは、きっと2人の間にあった絆すら切れてしまうくらいの大きな出来事があって。それは跡継ぎとなってしまったティボがこういう関係はいけない、と一方的にマキュのことを蔑み始めたのかもしれない。きっかけになったのは跡継ぎになってしまったことで、そこからティボは本当の仲間、友達を作ることをやめてしまったようにも見える。マキュは誰かが隣にいてくれないと生きていけなかった。だからロミオとベンと仲良くし、モンタギューで生きると決めた。ただどんなに先頭に立って大きな声をあげてもモンタギューになれない彼は必死で自分はモンタギューであるとアピールするように、言い聞かせるように叫ぶことしかできなかったんだ。鏡合わせのようなそっくりな2人と例えたけれど、性格みたいなところはコインの表と裏みたいに正反対で、それがまた似ていると感じるところが強調される。それでもそれぞれが孤独を背負っているから似ていないようでやっぱり似ているんだよな。知らんけど!
で、次に続きます。






6.偽物は本物には勝てない

えっと、妄想の続きです。
ここで物語に出てくる甥っ子と息子たちの話がしたい。マキュはヴェローナ大公の甥(いい加減書くのやめたいけど書けば書くほどしんどくなるから書く)で、ティボはキャピュレット夫人の甥。そしてベンはモンタギュー卿の甥。ロミオはモンタギュー卿の息子。並べてみると

  • 本筋の血を息子として引き、跡継ぎであるロミオ
  • 本筋の血を引くが、跡継ぎではないベン
  • 本筋の血を引いていないが、跡継ぎになってしまったティボ
  • 家柄、血縁がないマキュ

"血縁"だけをみると、4人の血の繋がり方がみんなそれぞれ違って。その中でもいちばんの偽物はマキュで、本物ではないのがティボ、そして本物がベンとロミオなんですよね。ただ、ベンとロミオでみるとより本物なのはロミオで。
決闘でティボがマキュを刺し、ロミオがティボを刺ことは偶然だったのか必然だったのかを考えた時、もしかしたらこれは必然だったのかもしれないと思った。

憎しみに支配され、モンタギューとキャピュレットの間で争いはあったものの、命を奪い合うような戦いにはならなかった。その引き金になったのはティボがマキュを刺したこと。マキュはティボに対して殺意があったけれど、どんなにその殺意を募らせてもティボの命をマキュの手で断つことはできない。それは偽物であるから。偽物は本物の命を奪うことができない。マキュの命を奪うことができたのは他でもなくティボしかいなかったわけで。ロミオとベンはマキュと同じところにいたから手は下さない。そんなティボも偽物ではないけれど本物でもなくて。ティボの命を奪うことができるのは、絶対的な本物であるロミオだけなんですよね。ベンがどうしてティボを殺せないかというと、ベンとティボは見ている世界が一緒だったから。「綺麗は汚い、汚いは綺麗」の景色はモンタギューもキャピュレットも家柄は関係なくて。ティボの見ていた世界も同じだった。それは綺麗は汚い、汚いは綺麗。ただしロミオとジュリエット以外!であるから。この世界にいる人に真っ向から、「綺麗は綺麗、汚いは汚い」と言えるのはロミオだけで。あの時、みんな衝動で動いていたけれど、本物が偽物の命を奪っていくやり取りだったって考えるとあそこでマキュを手にかけるのがティボで、ティボに復讐するのがロミオなのは必然だった。そして絶対的な本物の命を奪えるのは自分自身しかいない。だからロミオは自分の手で命を断ち、ジュリエットはロミオを追いかけるように命を消してしまうんだ。…知らんけど。
ベンの命を奪える人はロミオしかいなかったわけで。でも同じ世界で生きているベンの命を奪うことはないから、生き残るしか道がなかった。

シェイクスピアの言葉にこんな言葉がある。

臆病者は本当に死ぬまでに幾度も死ぬが
勇者は一度しか死を経験しない

この言葉はシェイクスピアロミオとジュリエットを発表した後に残した言葉みたいだから大きくは関係していないとは思うけど。それでも、この言葉をみて、勇者がロミオとジュリエットだとすると、臆病者がマキュとティボで。臆病者は勇者の死を一度にするために何度も死を経験するのではないかと思った。偽物だから、本物を守るためにマキュとティボは自ら選んで臆病者になったんだ。

ティボの環境のこと考えてたらとんでもない話に膨らんでしまった結果残ったのはティボルト、めちゃくちゃしんどい。だった。マキュはどんなに頑張っても「飼い犬」にしかなれないし、ベンの背負う孤独さも見えた。仲間のいるところにはいけないベン。それでもこの決闘をいちばん近くで見ていたからこそ、平和になるヴェローナでみんなの先頭に立って仲間の分まで生き抜いてほしいんだよ。
ま、この妄想、全部キャピュレットの本筋がキャピュレット卿だったらと仮定した場合の話なのでママが本筋だったらぶれぶれになる妄想でした!
でも、やっぱりロミジュリしんどいわ





7.悲劇のヒロイン・キャピュレット夫人

いや〜春野寿美礼さんのキャピママが大好きでした… キャピュレット夫人、夫からの愛に気がつけず、最後に残った心の拠り所はティボルトだったのに、そのティボの気持ちは娘のジュリエットに向いていて。自分の中の葛藤も、ティボの葛藤も全部わかっていながら最後までティボの傍にいて、そしてまた凛と立つ姿が格好良くて。その夫人のキャラクターにビジュアルも相まって途中からヴィランズに見えてた。いつ毒りんごが出てくるかな、とか鏡の前に立った時はいつ「鏡よ鏡」って言い出すかなって思ってた。すみません… だって、あまりに綺麗に衣装を着こなしてくれるからさ… 寿美礼さんの衣装全部好きでした… こんなこと言ってますけど、悪魔のように笑いながらジュリエットの前に立つ彼女からもまた孤独が滲み出ていた。
夫人の拠り所でもあるティボルト。彼の独り言のような告白「好きなんだ、ジュリエット」の言葉に驚きと同時に怒りも出てくる夫人が少女みたいに可愛く見えて。誰にも言わずに隠してきたティボの気持ちで、まさか従姉妹のジュリエットにっていう驚き。そして綺麗で可愛い娘に負けた嫉妬心みたいなのが一瞬の表情から感じられて、初めて見た時あまりの可愛さにときめいてしまった…
「あの頃私綺麗だったの」と語るママはジュリエットが張り合える相手ではないことをわかってはいたものの、ティボの気持ちを聞いて張り合わずにはいられなかった。ティボルトのことを"私の大切なたった1人の甥"と口にはしているものの、気持ちと愛情は言葉以上のものだった。だからこそ、ジュリエットと並ぼうとするし、辛い事実を突きつける。娘ではなくて1人の女としての嫉妬心。だから幸せになってほしいと心では思っているものの、口から出てくる言葉は"私"と同じ道を辿ってほしいと出てきてしまう。やっと素直になれた時には拠り所であったティボルトもジュリエットもなくしてしまったあとで。ただ、時間は遅かったけれど、ジュリエットの幸せを願い、語って最後に寄り添うことができて少しだけ、肩の荷が下ろせたんじゃないかな。






8.芯が強くてどこまでもかっこいい女、そうイルマちゃんのお話

大阪ラストスパートで、ティボの最後をみていたらふと目に入ったイルマちゃんに釘付けになってしまい、その後は気がつくと双眼鏡でイルマちゃんを追いかけてしまっていた、双眼鏡泥棒イルマちゃん。自分の気持ちに嘘がつけなくて格好良い強い女だった。もっとたくさんイルマちゃんのこと見たかった。※あんまり見られていないので憶測と妄想が飛び交ってます

イルマちゃん、ティボに対して特別な感情を抱いていて、ジュリエットのことはあんまり好きじゃなさそう。この女苦手だわ、っていう意識。そういう面倒くさいの、女ってよくあるじゃないですか、そうそれ。その気持ちがあるからジュリエットの傍にはあんまりいないのかなって。「可愛い子ぶっちゃってさ」っていうのも結構本音だったりするんだろうな。知らんけど。
ティボがマキュを刺したあと、渡辺ティボとナイフで遊ぶような仕草を楽しそうに妖艶な目を向けながらしているのを見て、イルマちゃんはティボのこういうところが好きなんだろうなって感じた。孤高のリーダーとして気高く振舞っている姿、敵に勝利して喜ぶ姿。弱い姿も知ってはいたけれど、見ないように知らないふりしてた。だから最後の瞬間まで、目の前にいたのは理想のティボルトだった。ただティボの弱い姿も知っていたから、ロミオと対峙する時に名前を呼ばれてロミオに向けるナイフを持つその手の震えにいちばん最初に気がつくのもイルマちゃんで。驚きとそんなティボの姿に動揺が隠せない「ティボルト?」の一言、いつもとは違う"異様"なティボの雰囲気に居ても立っても居られなくて身体が前に出るのに、止められてしまう姿が歯痒くて。ティボが刺された時には膝から崩れ落ちて倒れるティボを見ることすらできない。さっきまで勝利の喜びに浸っていたのにいきなりドン底まで突き落とされる目に写ったものは絶望だった。それでもキャピママがきたら咄嗟にティボの近くにいた子を離して場所を開けてあげるイルマちゃんに強い女をビシバシ感じたよ。「命を償う代償、誰かが支払わねばならない」とロミオの処罰を大公にみんなで訴える中でひとりイルマちゃんだけロミオの方をみて訴える。それだけロミオに対する復讐心が強くて。ロミオの刑が追放になった時の勢いあまる叫び方、そしてまた彼女を襲う絶望にイルマちゃんにとってのティボの存在の大きさを突きつけられた。ティボの遺体と一緒に歩いて行く時、イルマちゃんはティボの傍でずっと泣いていたジュイトイちゃんの肩をとるんですよ。それがもう辛くて辛くて。ティボのことをよく理解していた2人が肩を並べて歩く姿にティボをなくしてしまった悲しさが襲ってきて、そして何よりぽっかりキャピュレットには穴が空いてしまったのがみえた。
ロミオとジュリエットの亡骸を見ながら、身内の出来事なのにどこか現実味がないような感じがまたジュリエットよりもティボに気持ちがあったことを感じて。それでも両家が手を取り和解をすると安心したような表情をする。ティボルトをなくして、ロミオとジュリエットの愛を初めて感じて、争いがなくなることにほっとしたような、そんな印象。
イルマちゃん、自分の感情に素直で強くてティボのことを大事に思って、そして高くそびえるものの格好良さに憧れていて。だからこそ無くした時の絶望も誰より大きくて。ティボがいるからあれだけ強くいられるのを感じて私がとても好きなタイプの強い女で一瞬で心と双眼鏡を持っていかれた。格好良かったな。ヴェローナではマキュにナイフを向けられて、仮面舞踏会では骨抜きにさせられて、決闘では首絞められてイルマちゃんただただ羨ましい限りだったよ……
ダンサーさんそれぞれに物語はあると思うからもっと色んな人見たかったなと思うけど私はイルマちゃんの強さに魅せられて幸せでした!






色々書いたけど思いを言葉にし始めたら上手にまとめられない私がいちばん不器用でした!ここに書いたのはただの一個人としての解釈ですので悪しからず。
ロミジュリ千秋楽迎えてからも全然終わった感じがしなくて、それを埋めるように廣瀬さんのイベント行ったり大公のイベント行ったりしてたけどやっと卒業できるかなって思ったのでこれにて私のロミジュリはおしまいです!
本当に楽しかったし何より出会いの多かったロミジュリだった。新しい世界に連れてきてくれた平間くんには感謝しかありません。

ありがとう。またいつか。








*1:ベストアクトとはまた違った意味合いで好きな公演。

*2:これさえ言っておけば何を言ってもいいと思ってる魔法の言葉

*3:多分、断定はされていないので