落とし物箱

出会っちゃった人たちの話がしたい

剣劇「三國志演技〜孫呉〜」




三國志をやるよと聞いて行ったらシェイクスピアを見せられ、あれよあれよという間にチケットは増え、12日間で、健やかに死体になりました〜〜〜〜〜(ダブルピース)


ここ数年戦っている役者梅津瑞樹が荒牧慶彦プロデュース作品にお呼ばれしました。明治座三國志やるよ、W主演だよってだけで情報過多でのたうちまわってたらやけに豪華なキャストが揃ってるし、ハリセン叩いてもらうよ!味噌汁作ったよ!作品に出てくるよ!制作秘話もお話するよ!お渡し会もあるよ!と何がなんだかわからない状態で、始まる前から楽しかったな。
明治座ってそもそも催物が多くて(ご飯とかご飯とか)好きな劇場のひとつなのでそれだけでわくわくしてた。キャストの時点でわくわくしていた一方、正直そんなに期待はしていなかった。三國志に関してはちょうど剣劇が発表されたタイミングと別の三國志をテーマにしている作品を見る機会が重なったので三国志演義をぼちぼち読んでるくらいの知識。歴史自体が苦手なので他は何も知らず、脚本演出の末原拓馬はキャッテリアで見てたけど…ね。初日が終わるまで脚本がかが屋だったことを忘れていたのもあるので結果ほぼ末原拓馬初めましてになるのでした。知ってたら少しだけ防御態勢が取れていたのかもしれないが、そんなこと考えたってもう全て後の祭りなので考えないことにする。そんなわけで大きな期待をしないまま、楽しめたら良いな〜の気持ちと少しだけ何がお出しされるかわからない緊張感を持って明治座に向かった初日。結果は冒頭に書いたように見事にダメージだけ蓄積し、這いつくばりながら明治座に通う羽目になった。江東の小覇王の話読んでたけどまさか孫策が死ぬところ、狂ってくところまでやると思ってなくって!!!!悔しいです。全部私の負け。これやられたら嫌だなと思いながら読んでたこと思い出しました。色々あれどこの12日間は本当に充実していたし楽しかった。悔しかったけど。ありがとう明治座、ありがとうしゃちょー!


私は荒牧慶彦のことはほとんど知らず、三國志解説配信で初めて彼が三國志のオタクであることを知った。あの配信、見てるおたくを置いていきながら一生早口オタクしてて面白かった。例に漏れず途中から内容は全く入ってこなかったが、楽しそうで良かった。(薄っぺら感想)千秋楽の挨拶でそんな彼が今回の脚本、構成にガッツリ入っていたことが明らかになったことによりすごい気持ちになりながら話を聞くことになってしまった。プロデューサーってどこまで介入してる?結果として当てがきなのかそうじゃないのかはわからないことにしておきたいけど(当てがきな気がしているので)あの梅津瑞樹が爆誕してしまったのでもう何も言えない。私は毎公演1幕終わったあとに死体になっていたよ。2幕で取り戻せることもなかったので終わり。もうずっと知ってたし、これからもずっと知ってる事実なんだけど、だって、梅津瑞樹って芝居がべらぼうに上手いから!!!!!!!!!結局これが今回のサビになってしまう。ここ数年、何本か彼のお芝居を見てる中でも上手いなってずっと思ってたけど、改めて大声を上げたくなった。芝居が!!!!上手い!!!!!!!!!!
今回いちばん驚いたのは殺陣のお芝居だった。子供の頃、戦に出陣する時、狂ってる時、殺陣を見るだけでどんな状況なのかがわかるの単純にすごいなと思った。私はそこまで殺陣をみる力はないけどこの期間で上手くなったなと思ったし、そこに感情が乗るから殺陣に対する雑念が入ることもなかったの良かった。そして毎公演本当に楽しそうにお芝居をしていたのがすごく印象に残ってて。充実しているのが見ているだけで伝わってきていたので本当に良い現場に出会えて良かったね、の気持ちになっていた。それこそ千秋楽挨拶でもずっと楽しかったって言っていて、あんなに充足感に包まれている姿を見ることになるとは思わなかった。無事に最後まで完走できて良かった。千秋楽おめでとうございました!お疲れ様でした!!


シェイクスピア要素が盛り込まれた三國志。個人的に梅津のシェイクスピアは去年の8月にリーディングドラマ ロミオとジュリエットで見てたけどこの時は朗読劇で助かったな、お芝居としてやられたら死ぬな、と思いながらなんとか繋げていた命がそのまま今回は「マクベス」「ハムレット」の要素を交えつつ三國志のお話として提示されてしまった。こんなはずじゃ!なかった!!!!甘ったれてんじゃないよ!ちゃんと芝居をみろ!と殴られた気分だ。すみませんでした。そこまで多くの作品を見ている訳ではないけれど、シェイクスピアの詩的な台詞難しいなと感じることが多いのだが、梅津を通して聞いていると本人の中で咀嚼されて出てくるからその違和感がなかったのが驚いたことのひとつだった。これは廣野もそうで、末原拓馬の台詞回しがそのままできていたらしい。今回の作品に関してはシェイクスピアの様な台詞であってシェイクスピアでないことは確かなんだけど、この台詞を発している瞬間の馴染み方を見て今後シェイクスピアの作品見てみたいなの気持ちにさせられた。あと太史慈にお前らの軍はべらべら喋りながら戦うのがルールなのか?って聞かれたの、まあ、シェイクスピアなんで…さーせん!とは思っていました。


一国の主になった策(強い部分)を全面に出しながらも絶妙な加減で本当の策(弱い部分)が見えてくるの圧巻のお芝居だった。周瑜の前にいると自覚している時は強くて優しい姿しか見せないようにしているの、見ているだけで苦しくなってしまう。躁と鬱の塩梅が絶妙で私の心をずっと抉られてくるようなお芝居に頭を上げることができなくなっていた。そもそも私の性質として断金に反応できる才能がないので、この2人の関係性は親友ということ以外上手に汲み取れてない。ただ最後に孫策が選んだのは周瑜ということだけはわかる。悲しいくらいに断金わからないをしてて自分でもちょっと面白い。周瑜孫策が笑い合う瞬間の表情が良く見えた日があって、あまりにも幸せそうに安心させるように周瑜に笑いかけていて、この表情は周瑜にしか見せない顔なんだろうというのを感じてこの2人って何か爆発的な何かがあるのかもしれない…というのだけ少し汲み取って終わってしまった。

断金に沸く才能がない私は孫策が父離れして周瑜の隣を選ぶ話だと思いながら見てた。父親に認められたい一心で子どもの頃から時間が止まってしまっていた孫策。認められたいから強くなって、認められたいから大きくなる。父親の大きすぎる存在と強くなれという呪いが彼をあの世界に引っ張り込んでしまった大きな理由に思える。孫策の目指していたゴールは父親に認めてもらえるくらい大きくなることだったから、強くなりたかった訳ではない。そんな孫策の隣に周瑜が現れて、周瑜がいるから強くなれた、そんな孫策だった。
孫策の部屋で周瑜が泣いていることに気がついた瞬間に狂っていたのが一気にマトモになって昔話を始めるのあの瞬間、周瑜を泣かせてしまった罪悪感と一緒に気を紛らわせるのうな話し方をするの、怖いけどそれが孫策が自覚しているあるべき周瑜の前での姿なんだろうな、この男を守ると決めた日を見せられた感覚に近いのかもしれない。周瑜が泣いていることが孫策を鬱から引っ張り上げるトリガーなのがわかってしまう。見ているこっちはそんな孫策に対して恐怖心が強くなる一方で昔話を周瑜が笑ってくれるように話す舞台上と客席の温度感が交差していく瞬間、余計にこの男の怖さを感じていた。この話の終わり、最初の頃はあくびしてから「眠くなってきた」って言ってたんだけど後半あくびがなくなったのでより恐怖感が増した。孫策の目に入っているのは父親だけな事実に震えるしかない。

程普が周瑜孫策の昔話をすることで孫策の弱さが伝わり全てのピースがハマっていくわけだが、あの程普の「頑張らせてあげてくださいよ」の一言で孫策のステージが出来上がる図が個人的に心の柔らかい部分を直接鷲掴みにされているようで苦しくなる。ラストの雪原のシーンは圧巻だった。広い広い舞台の上に白くピンと張ったシーツが敷かれ、そこにシンシンと振る雪と舞う赤い血。そして2人の男が小さく寄り添っている姿、こんなに画が美しいのに語られる言葉ひとつひとつは心に剣を突き立てられているような感覚にさせられるの、演劇でしか得られない体験だった。降っているのは雪なんだけど、桜が散っているような感覚にもさせられて、冷たいだけじゃなくて暖かい別れのようにも感じさせられる。本当に綺麗で一瞬の時間を永遠に感じる様なシーンだった。父の姿をした悪霊を周瑜と一緒に倒す。周瑜から怖いよって言葉を投げかけられて立ち上がる姿、空虚な場所に舞う剣がなんとも滑稽で。ただ2人で剣を振り回している姿は昔一緒に雪遊びをしていた頃を感じさせるそれもあって。いちばん忘れられなくて忘れたくないあの景色。これが孫策に用意された最後のステージだったの本当に残酷。「怖いものなんてないみたい、涙なんか流してるのみたことない」は周瑜から見えてた孫策の姿で、でも周瑜の今の本心とは違う。あそこでもうほぼ失神してるのに、その言葉で身体を起こすのはずっと周瑜の前にいた姿の孫策で。この最後の2人の時間、2人共本心を隠しているわけではないけど、ありのままの2人ではない状態なことが辛い。そしてみんなが駆けつけた最後に言葉を放つ孫策は、ずっと背中を見ていた孫策大将軍になっており、本当に格好良いなと思わされてしまう。梅津って、芝居が上手い………………

こんなに孫策に食らってるのって私は梅津のこと0番に立ちきれない男だと思っているところが大きくて。孫策の演説とかみんなの真ん中に立ってどしっと構えてる姿に惜しいな、あと懐の深さと抱きしめる力が足りないなと、これに関してはこの作品だけではなく他の作品でも思っていて。今回その感じで進むんだなと思いながら見ていたら頂上から転がり落ちていく姿を見せられ、ただただ恥ずかしい気持ちになりながら見てた。梅津瑞樹じゃないとできないキャラクターという説得力が増してしまうことも全部含めて手のひらの上で転がされすぎている。そんな孫策の跡を継ぐのが孫権、0番に立てる男廣野凌大である。あれだけ周りのみんなを巻き込んで0番に立てる男が兄から引き継いでこの国を率いていくの、そんな残酷なことある?梅津の立てない場所に廣野は立てるから。私個人的に廣野の0番ヂカラが好きなところもあるのでこの流れ、美しくもやはり残酷だった。そこにプラスして人徳にかけては孫権の足元にも及ばないは「そうですね!!!!!!」とヘドバン並みに頭を振ってしまう。孫策は強くなることを強いられた結果その矛先が父親に向けられ、周瑜が隣にいることで強さを獲得できた。初陣も人を斬ることも、全部自分の意思じゃなくて偶発的に遭遇してしまったから足りないものは覚悟だったのだろう。孫権は自分の弱さを自覚して、戦う理由を見つけ、自分で初陣の場所も決めて、覚悟を持って戦に出て強くなっていく。一つずつ丁寧に階段を登って呉の当主になっていく道が綺麗だった。孫権が強くなりたい理由が民を守るためなので結果どこまででも強くなれる男になったんだ。初めての戦で敵を刺すことに躊躇していたけど、覚悟を持って刺す瞬間本当に大好きだった。ここで孫権の人生の歯車がひとつ回ったなというのを感じさせられる。この兄弟が置かれた場所で必要なものを持っている弟と持っていない兄の図に私はいちばん食らっていた。孫権の演説を聞きながらこの男、こんなに小さいのにびかびか光って周りの人間に頼ることができて、頼られることもできて、次を担う主になれる懐の広さを感じて、孫権の成長を感じていた。というかさ、廣野もこれまたお芝居がめちゃくちゃ上手いんだよなー!!!!(知ってたけど) ぽちゃぽちゃの子どもからちゃんと一国の主になるまで成長していく過程がお見事だった。一国の主を横ラインで見た時に交差していく兄弟、物語としての面白さ綺麗さに加えてやっぱり残酷な感じがたまらなく響いて良かったです。


書いてて感じる、私ってほんとに孫策しか見えてなかったのかもしれない(かもしれない)。全員分書いてたら終わらないのとその前に力尽きそうなので好きなところぽつぽつ

自分が抱いていた憎しみを抱かれる側になった時のあの取り乱す黄祖。圧巻の玉城オンステージの長台詞は毎回見応えがあって人斬りだった彼と愚かな繰り返しだと気がついて劉表様に助けを乞う姿までめちゃくちゃ良かった。この黄祖の展開も想像とは違ったけれどこれはまた良い玉城裕規を見れたなと思ってる。
太史慈をやる早乙女友貴、私は彼のことを劇団☆新感線でしか見たことがないのでこのキャラクターすごく新鮮だった。無口で人を寄せ付けないのに人望が集まってる、帰ってきた時の肝の据わり方は迫力あったな。太史慈誘ってどうしたら良いか迷ってる孫権との関係性も絶妙だった。
程普の肝心なことは何も言わないけど、いちばん孫策のことを思っている姿が周瑜とのシーンと最後孫策と対面した時に出ていて見るたびに胸がギュッッッとなっていました。
あと韓当おじさんの夜逃げのシーンはすごく好きだったな。平和な世の中を作るために戦争をしている、そのために力を貸す、今の戦争のない場所で過ごしているからこそ響く言葉だったな。最後孫堅演説前の周瑜の「今までの孫策の行いは〜」のところで誇らしそうに聞いている姿、すごく好きだった。

すごく見やすい形で作られてた作品だったなと思ってる。丁寧で無駄なところがなくて。欲をいえばこれを3時間2部構成の作品でも見てみたいそしたらもう私の命はなかっただろうからまだ、救われているのかもしれないな。


そして権力がもたらしたスーパーご褒美タイム2部〜〜〜〜〜〜

1部で大体座席に埋もれて死んでいたので2部はちょっと放心状態で見ていることが多かったんですけどハリセンばちばち叩くのは楽しかった。1部で吐き出せない気持ちを全部ハリセンに込めてばちばちしてた、ハリセンって良いな。
後半みんな楽しそうに殺陣してたの良かったねえ楽しいねえの気持ち、体力面のことはもう知らん。
断金殺陣も2人で遊ぶ様に剣を交えていたの可愛かったししゃちょーがゆっくんを神輿に乗せ扇子だの槍だの刀だの全部を詰め込んでやってたの全てを放棄してやりたい放題で気持ちが良かったです。権力を持つということはこういうこと。扇子の踊り、廣野の身体の動かし方天才本当に綺麗って褒めちぎってたところでゆっくんみたら比にならないくらい綺麗で(当たり前体操)ずっとやっているとはこういうこと…を学びました。でも廣野の手の形から腕の動かし方は脳を溶けさせるので大満足。孫権太史慈殺陣、廣野の運動能力が追いつくのプラス仲良しな2人が楽しそうにやってたの良かった。本編では見せない黄祖のキャラクター大好きだった。かわいい。全員かかってこいはあの人数がわらわらステージ上にいるだけで見応えがあった中で孫策劉表様がダチョウ倶楽部して2人が戦っているのを下から嬉しそうに見ている黄祖の図が大好きでした。センターで韓当おじさんがエアギターしたり孫権は頭振ってたり、終わりで下手でちょこんとヤンキー座りしてる孫権黄祖はただのかわいいかわいい生き物だった。




色々あったし色々思うことはもちろんあれど、今思い返すと楽しかったな〜〜の気持ちで明治座に通えてたの、ほんとに良い期間でした。毎回ボロボロに泣いて死体になって這いつくばるように帰っていたけど。思わぬタイミングでこんな梅津をご提示されるとは思っていなかったので一生こんなはずじゃなかったんです!!!!って叫び続けるけど!全部全部濃い思い出としてこれからも忘れられない作品になった。良かった。まだまだ梅津との戦いは終わらなさそうだが、この男のお芝居は好きみたいなので、これからも見続けることになりそう。
明治座ありがとうございました!!!!!やっと書き終わったし配信見よ〜!