落とし物箱

出会っちゃった人たちの話がしたい

孤独な2人の果てない戦い 〜 19版 ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」




みなさんお疲れ様です、ロミジュリの沼の底からこんにちは。無事にヴェローナでモンタギューの女してます!ティボルトと駆け落ちしたいタイプのモンタギューの女です。何をとっても禁断でしかない。私は何を言っているんだろうか。



さて、ロミジュリ東京公演も残り1週間を切って、改めて公演期間が2週間ってめちゃくちゃ短いなあと感じてる終盤戦です。個人的東京ロミジュリは残り1公演になったので今の心境と目で見えたこととわからないこと(とたまに妄想と)か。とはいうものの、とにかく私は平間マーキューシオと廣瀬ティボルトの話がしたい!!!



そうそう、こないだロミジュリ前に書いてた戯曲のエントリ読み返してたら私めちゃくちゃティボルト警戒してて面白かった、過去の私、自分のことよくわかってる。ちゃんとティボルト好きになってるよ。



未だ見ぬ恋人探しに行かなきゃっっっ(大野ロミオボイス)

毎回こんな心境で見に行くロミジュリ。終わって劇場出る頃には心ここに在らずです。


自分の中での解釈もままならないまま書き始めてるので終着地点はありません、大千秋楽までにゴールできたらいいね。


今のところの観劇比率はマーキューシオ(平間4:黒羽0)、ティボルト(渡辺1:廣瀬3)です。3/5現在



マーキューシオのお話

平間くんのマーキューシオにやっっと会えました!歓喜!噂通りのヤバイ薬キメてるマーキューシオ!ずっと見たかったやつ!ありがとう!ロミジュリ!イケコ*1!!と興奮しまくった初日終わり。
平間くんのマーキューシオ解釈、17版に関しては今回の19版ロミジュリをやるにあたって出た様々なインタビューを読んでいたので、最初からヒントをたくさんもらえている状態だったけど、19版として前回よりも進化しているだろうし、あんなにヒントがあったのに実際見てみると全然わからなくて楽しい。マーキューシオがしんどいのは周知の事実なので敢えて書きません。毎日しんどいって言ってる。


さて、マーキューシオって始めに血縁関係の話をするとモンタギューの人間でもキャピュレットの人間でもなく、家柄としては大公というヴェローナを治めている家にあたる。このマーキューシオの血縁がロミオ&ジュリエットを深くしている1つのピースになってるからすごい。シェイクスピアすごい。(今更)
どうして彼はモンタギューを名乗るのだろうか、モンタギューでもキャピュレットでもない人間がなぜこの2つの名家の争いに巻き込まれることになったんだろう、という疑問がロミジュリ戯曲を読んでいてずっとあったんです。それが小池先生が潤色をすることによって一気にモンタギューの人間になる。私の中でずっと噛み合ってなかったことが初日に見て一気にすとんと解決しました。
マーキューシオって対キャピュレットの気持ちよりも対ティボルトの気持ちの方が強い。ティボルトに敵対する選択肢を選んだ時、自然とモンタギューにいくのがこのヴェローナでは当然の流れだった。ヴェローナにおける大公の立ち位置は"中立の立場"で、その甥にあたるマーキューシオはどちらにでも属すことができるし、その選択をしないことだってできたはず。ただ彼はモンタギューにいることを選んだ。立場上だとマーキューシオの方がモンタギュー卿よりも上*2なのに敬意を示していることから、彼はモンタギューに居場所を与えてくれ、この場所で自分を信頼してくれていることに感謝してる。だからこそやらなければいけないことだって彼にはある。それはモンタギューを守ること。それにしてもこの時代、自分より身分が下の人に対して感謝の気持ちだけであんなに敬意を示すことができるものなのかね……(完全なる知識不足) それともまだこの2人の間に何かあるか?知らんけど。*3

ミュージカルを見ると原作ではそこまで感じなかったマーキューシオ対ティボルトが前面に押し出されていて、個人的にこの対比がすごく好みだった。マーキューシオにある"憎しみ"の気持ちは"キャピュレットへの憎しみ"ではなくて、"ティボルトへの憎しみ"が大きい。ティボルトに対する執着が大きすぎてお前らの過去に何があった?って考えたくなるし考えてるけどここからは妄想なのでまたいつか。

タイトルにしたマーキューシオから見える"孤独"のお話がしたい。初めて見たとき色々しんどかったけど、いちばん引っかかったのが「世界の王」前のベンヴォーリオを置いてきたロミオに放つセリフ
「お前らマブダチだろ〜?」*4
にめちゃくちゃびっくりした。ロミオ、ベンヴォーリオ、マーキューシオの3人の関係性はそれこそマブダチくらいの仲だと思っていたのに、彼の思う"マブダチ"の中に自分は存在していない。彼はロミオとベンヴォーリオが"マブダチ"だと思ってる。マーキューシオは自分を客観視した上であの言葉をロミオに投げかけたのか。はたまた本心なのか。その客観視してしまうところが気持ちではなくて家柄、血縁関係が関わってきているのだとしたら、マーキューシオ、実はいちばん孤独と戦っているんじゃないか…と思い始めてしまった。彼自身、モンタギューの名前を背負わせてもらっているものの、背負いすぎるのはいけないと、偏りすぎるのはいけないとどこかでわかってるんじゃないか。彼の役割はあくまで"モンタギューを守ること"だから。「決闘」でモンタギューvsキャピュレットというよりもマーキューシオvsティボルトという形での争いに見せようとした(この喧嘩に関するマーキューシオの言い分は今までの鬱憤を晴らすみたいな言及の仕方だしね)のも実はモンタギューの家を巻き込まないためにとったことだったりして…… 大公の甥という立場、いずれモンタギューを離れないといけないことも、ここにはずっと居られないことも全部わかって戦うマーキューシオ。とてつもなくしんどくて辛い。近くにロミオがいても、ベンヴォーリオがいてもこの血縁関係から離れることなんてできないマーキューシオの孤独。マーキューシオはこのモンタギューから"いつか離れなければいけない"時をロミオの結婚を知った時がその時なんじゃないかと悟った。ヴェローナが壊れ始めていくのを目の前にして「もう終わりだ!」って叫ぶのは、ロミオとの、モンタギューとの関係性ももちろんあるけれど、必死に孤独を誤魔化して戦ってきたマーキューシオ自身が今の状態でいられなくなることを思った言葉だったりして…… このままモンタギューとキャピュレットが和解しちゃったら、モンタギューにいる意味がなくなっちゃうんだもんね、知らんけど。結局とんだ妄想になっちゃった。私はマーキューシオにふと感じる孤独が辛い。




ティボルトのお話

ティボルト、めちゃくちゃ好きだ!!駆け落ちしてくれ!!!!!ほら、私ってモンタギューの女()だからさ、駆け落ちがいちばん争わなくてすみそうじゃん?
冒頭から声を大きくして言ってますが私はティボルトが好きだ!特に前情報も入れずにティボルトをみて激震が起きたのは2/27ソワレ。廣瀬さんティボルトが想像を超えすぎていて、ほとんど覚えてないけどこんなティボルトがいるとは思わなかった。解釈最高ティボルト(IQ2) 見れば見るほどしんどいティボルト。(語彙力の欠如) 好きだ。(しつこい)
ティボルトってキャピュレットへの忠誠心が軸にあって動いている、それこそ飼い主がいないと暴れられない大型犬っていう印象だった。そのイメージでいたら全てをひっくり返された。ティボルト、キャピュレットへの忠誠心より前に自分の気持ちが軸になって動いている。衝撃を受けた。飼い犬でもなければ大型犬でもない…


ティボルトは(キャピュレット夫人側の甥ではあるが)キャピュレットの血を引く人間で、キャピュレットの跡取り。モンタギューにはリーダーが2人*5いて、ロミオがいる。その3人に対してキャピュレットは1人。キャピュレット卿からも相手にされなくて、頼れる人もいなくてずっと1人で戦っている。ティボルトの孤独はわかりやすいと思うのでそんなに語りません。個人的に携帯持ってないことがヴェローナでの"孤独"をすごく感じる*6ポイントです……
ティボルトって先ほども書いたように私の中のイメージだとキャピュレットへの忠誠心を大きな軸としてヴェローナで生きてる印象でした。それが大きく変わっていたのがティボルトの心情。メンタルがボロボロで、だけど自分の意志がはっきりあること。強くいようと見せているけれど、実はいちばんヴェローナでの争いに歯がゆさを感じているのはティボルトかもしれない。大人のつくった世界に生まれて、憎しみ合うことを教えられて育ってきたけれど、子どものままでいられずに確実に成長していて。周りと違って1人だけ早く大人になってしまった。「ティボルト」での自分の立場を言い聞かせているような歌い方。キャピュレットの人間で、いずれはここの跡を継ぐ使命がある。従姉妹同士の結婚は禁止されていることだって、それでもジュリエットをいちばん近くで守りたい思いとか、愛があることも全部許されないとわかった上での"俺はティボルト。"に彼の思いの深さとやり切れない思いを感じる。なんて堅苦しい場所にいるんだろう。
ラスト、ロミオに刃を向けられた時の表情に「モンタギューを滅ぼしたい」という気持ちよりも「ジュリエットに幸せになってもらいたい」という気持ちが見えて、私は死んだ。ティボルトは誰よりも大人だったんだ。
自分のいる場所に納得していなくて、ジュリエットを想う気持ちが大きくて、それでも大人の言う通りにしか生きられなくてもがいているティボルトはある意味等身大の若者なのかもしれないな、とすら感じさせる。私たちのいる現代の感覚とかけ離れすぎた人かと思ってたらすごく近くに感じる人だった。



孤独な2人の果てない戦い(タイトル引用)

この"孤独"を背負っている(私調べ)2人って似ているようで似つかない。2人の共通点の1つとしてナイフがあげられる。ティボルトは「俺が頼れるのはこのナイフだけ」ってセリフと共にナイフを見つめる。対してバタフライナイフを器用に得意気に操っているのにマーキューシオから「ナイフ」って言葉は出てこない。それなのに"ナイフ"の印象はマーキューシオの方がある。*7この違いがそのままマーキューシオとティボルトだな、と感じていて。器用だから大抵の物は簡単に手に入れることができるマーキューシオと不器用だから手に入れることが難しいティボルト。ナイフへの執着は変わらないはずなのに圧倒的に印象付けられるのは器用なマーキューシオなんだ。コインの裏と表みたいに、ほとんど同じなのに全然違う。だから向き合うと喧嘩になる。ずっと背中合わせで生きなきゃいけない2人だったのかな。

お互いのベクトルは全く違う方向に向かっていて。マーキューシオはティボルトに向かっていて、ティボルトはロミオに向かっている。けれどお互い向かっている先からは振り向いてもらえない、一方通行の憎しみがまたより一層孤独を増す。そんな似ていないようで似ている対比がこの物語の中にたくさん見え隠れしていて面白い。「憎しみ」で2人ともナイフを見ているの知った時の驚きは忘れられないし、女の言葉に耳を貸さない2人も面白いくらいにそっくりだった。
2人は背中を合わせたら強くて誰にも負けない力を発揮できたんだろうけど、合わせる前に大人の力によって引き裂かれた結果"孤独"と戦うことになったのかな…… 知らんけど。



結局半分くらい妄想だったけど話したことは話できたのですっきり!


ティボルトのこと大好きでたくさん書いたけど基本的にマーキューシオ定点カメラでティボルト見られてないので誰か情報をください!!(笑)


では、またヴェローナで殺されましょう!!





*1:小池修一郎先生。ロミオ&ジュリエットの演出家さんです

*2:提示されている相関図を見た場合。もしかしたらモンタギューとどこかで何かしらの繋がりがあるのかもしれない。知らんけど

*3:魔法の言葉。これ言っておけばなんとかなると思ってる

*4:3/6 マチネではついに親友と言い放ったらしいですレポ調べ

*5:ベンヴォーリオとマーキューシオ

*6:詳しくはパンフレット渡辺大輔さんのページ読んでね、この解説めちゃくちゃ好きなので

*7:マーキューシオ定点カメラしているからかもしれないけど、私の印象として