落とし物箱

出会っちゃった人たちの話がしたい

世界がカラフルに見えた 〜 Coloring Musical「Indigo Tomato」再演






小さな空間にたくさんのきらきらと大きな温もりがあってまたその中には大事なメッセージが詰めこまれてる宝箱。1つずつ丁寧に中身を確認してそのメッセージを伝えてくれる。Indigo Tomatoはそんなお話だった。





Indigo Tomato、再演が発表された4/14。大阪にいた。トマト初演の時からまた再演してほしいなって思ってたけどまさかこんな早いスパンで決まるなんて思ってもいなかったので驚きしかなかった。Twitterを開いてびっくりしすぎてHEPエスカレーターにスーツケースをバンバン当てながら少しずつ事実を飲み込んでいった日のこと忘れない。

最初はトマト再演ってどうなんだろう…と思ってた。私の経験値として同じ作品の再演を見ることがほぼほぼ初めてだったので未知の体験だったし、初演がすごく良かったからこそ、それを超えられるのかな…みたいな心配もした。
結果としては初演の良かった温もりはそのままに、リアリティが増してより良い作品になってたってこと。全然心配なんていらなかった。平間くんも言っていたけど「わかっている分、深く」を体現しているなってずっと感じていた。それは平間くんだけじゃなくて他のキャストにも言えることだったしみんなが同じ思いなのはちゃんと伝わった。そして新しい空気を持ってきてくれた新キャストの2人も合わさってまた懐かしい気持ちにもなりながら新しいIndigo Tomatoになったんじゃないかなあって感じてる。


初演の時の衝撃は超えられないけれどそれ以上に得るものが多かった。そして改めて演劇って"生きてる"んだなって感じさせられた。毎回同じものなんじゃなくて1公演ずつ丁寧にみんなが演じているのを感じて、その時の気持ちをとても大切にしていて。こういうことができるのもIndigo Tomatoの強みでそういうのも含めてみんな違ってでもそれで成立する。この作品が伝えたいメッセージを1ヶ月の期間の中で様々な形に変えながら伝えてくれていたっていうのが率直な感想。


そして今回札幌公演と東京公演を観たんですけど単純に平間壮一主演の作品を平間くんの出身である北海道で観劇できたことが大きくて。なんだか感慨深いものがあったし、この2日間は吹雪で東京人の私からすると非日常の景色だったから、北海道で過ごす2日間は夢の世界にいるようだった。外は寒いけど作品は暖かいから終わった後に雪の中で遊んだりお散歩したり、そんな時間は寒くなんかなくてただただ楽しかったんだよなあ。トマトの余韻に浸りながらみる雪、なんて綺麗な景色なんだろう。


Indigo Tomatoを観る上で個人的にはマモルの存在がいちばん大事で。初演の時からタカシの気持ちに無意識的に感情移入できなくて。それができたのがマモルだったから「マモルから見たタカシの姿」に共感することが多くて。だからマモルにハマれるかハマれないかで楽しめるかの基準が大きく変わってくるんだけど、初演の溝さんマモルの兄貴のこと大好きなんだけど大嫌いな解釈が大好きで大好きでたまらなかったので純粋に今回のキャストに溝さんがいなかったのが残念だったしなんなら今でも溝さんマモルに会いたい気持ちは大きい。マモルもWだったら良かったのにな〜ってずっと言ってた。のでマモルのキャスト変更には怯えてました。
正直に白状すると初めてみた日は長江くんマモル刺さらなすぎて終わった後溝さんが恋しくなりました!
長江くんマモル、全てにおいて"諦め"ていたのがなんか噛み合わなくて。自分の人生にも兄貴にも夢も諦めていて、だから一周回ってタカシにあれだけ優しくいられるんだろうなって。「先生になるはずだった」って言われても「教員試験の受験勉強スタートに!」って言われてもなんだかピンとこなかった。夢にかける熱量が見えなかったのかもしれないな。
って寂しくなっていたのも束の間、東京で観劇してたある日めちゃくちゃマモルに身体震わされたの。ぼそっと言った「兄ちゃん、もう(母さんは)戻ってこないんだよ」って言葉にマモルは何も諦めていたんじゃなくて気持ちを全部内側に抑え込んでいたんだって気がついて、だから感情が爆発するんだってわかった時、私はマモルと共鳴した。これほんとに意味がわからなかったんだけど共鳴したの、私はこれを待ってたんだって、マモルの篭った感情が前に出てくるのを待ってたんだ。
それからはマモルから目が離せなくなって長江くんがめきめき成長していってタカシを思う気持ちが大きくなってあった結果マモル好きだ〜〜〜〜って叫んでた。おたくの奥義、稲妻よりも速い掌返し。長江くん、ほんとごめん、そしてありがとう。
マモルがタカシに外の世界に出て行けよと勧める時、マモルは知らない世界に飛び込むわくわく感をタカシに示すんだ。外の世界は怖くないよ、良いところだよって。笑顔を向けて勧めるマモルに胸が締め付けられた。そしてTVに出ないと発作を起こすタカシを鎮めて「兄ちゃん!」って叫びそっと笑顔を向けるマモルはいつでもタカシの前を歩く。彼の道標でいないといけない、そして離れられない存在なのを突きつけられる。事実そうなんだけどそれは無自覚として捉えているわけではなくて自分に課してもいる、だから辛い。タカシの近くにいる人は彼の道標にならないといけないって自分に負荷をかけてしまう。しっかりしないと、って気持ちと似たようなもので、だから自分の感情を外に向けることができなくなる。「お前が普通じゃないからだ!」とタカシを咎めた後に悔しそうなこんな言葉投げかけたくないのにっていう哀しそうな顔をタカシに向けるマモル、第二夜のテーマが決まったことを聞いて懐疑的な表情を浮かべるマモルがユーゴからの「いつでも夜空の星に祈るだけじゃ変わらないさ」の言葉に一瞬で覚悟を決めるその表情に、マモルはタカシの心の安静をいちばんに考えていて、もうこれ以上タカシが苦しむ姿は見たくないような気持ちがストレートに伝わってきて、タカシの気持ちにいちばん近くでずっと寄り添っている存在なんだって教えてくれた。
長江くんマモルは慈愛に満ちていて、兄貴のことが大好きで守りたい気持ちで溢れてる青年だった。
長江くん、表情からの情報量が多すぎてお芝居が上手になってほんとに驚きが隠せない。存在感を感じなかった初日からのこの圧倒的存在感にまで成長した長江くんマモル、最後は大好きになったんだ。千秋楽の日、平間くんも言ってたけどほんとにめきめきと成長していって、まさかこんなにマモル!!!!ってなるとは思わなかったんだ〜


そしてそんなマモルに「翼のないイカロスでも飛んで行った雲の上まで」って言葉をかけるユーゴが大好き。あんなに野心に燃えていて、人の上に昇って行きたい人からの言葉だとは思えないような格好良さで。やり方は不器用だけどみんなを巻き込んで新しい世界に連れ出すユーゴはこれからも上だけしか見ないで生きていくんだろうな〜って思う。
川久保さんユーゴ、野心に燃えすぎて周りが全然見えていないユーゴだったな。こんなにユーゴ嫌なやつー!って思ったのは初めてだった。(褒めてます)
どこかで、Mr.Brain Manのシーンで「2人は幼い頃から手を取り合って生きてきました。それはいつから?」ってマモルに聞こうとした日があって。人の心があまりにもないなって感じたんですよね。誰でもどこでも良い、人のこと踏み台にして自分はのし上がっていくんだって気持ちがすごく見えて。でもそれは居場所のなかった自分への当てつけのようにも見えて。自分の居場所を見つけるためには這い上がらないといけなかったんだろうな。そんな自分に向けたプレッシャーみたいなのに押し潰されそうだな、みたいなことも感じてた。だから円周率の暗唱をするタカシに向かって「なんだか負けたような気がする」って言葉がより響く。この言葉を口に出せる強さも持ってるんだよな、ユーゴって。こういう解釈もできるんだ!って発見がたくさんあったユーゴ、川久保さんの表の顔と裏の顔の使い分けがめちゃくちゃ好きだしやっぱり嫌なヤツには変わりなかった。(褒めてる) 千秋楽、タカシにハグされた時、びっくりしたけどでも嬉しそうな笑顔忘れない。
そしてまさーしーさんユーゴ待ってたよー!!!!って東京始まって叫んだ。「太ってよく笑う6」役のって言ってたけど初演のタカシの後ろからキャラクターみたいに笑って歩くあの演出が好きだったので今回握手に変わっちゃったのが寂しかったです。私の好みの話です。
まさーしーさんユーゴのMr.Brain Manにかける情熱が変わらなくて、でも自分のことを"異星人"だと口にするユーゴの居場所のなさはより濃くはっきり出ているような印象があった。目指している場所はこの番組を大きくしていくことにあって。居場所のなかったユーゴにできたことはひたすら勉強して勉強して誰よりも頭が良くなることで周りに認めてもらえると思っていただろうし、賢くなれば居場所がもらえると思っていたユーゴはそこに達しても居場所がなくて誰かに自分を見てほしいという思いが強い。
M5 BRAIN MANの音、ユーゴの勢いが前面に溢れ出てるのにどこか全体を通して寂しく感じるのはどこか戸惑いだったり迷いの表れだったりするのかな… あれだけ態度が大きいのも、少しでも立場が低い人に対しての嫌悪感が強いのも自分を守るためなんだよなって感じてた。その態度に周りも最初はついていけないし突き放してしまうんだろうけど、ユーゴは気がついてないけどみんな認めて居場所ができてるんだよな。


ユーゴに居場所があるなって感じさせてくれるのも最後の「Mr.Brain Man Season2はなし。それでも野心に燃えているユーゴ・オブライエンに!」って明るく言い放つアヤさんのお陰なんだよ〜!!
アヤさん、誰のことも否定せず、ちゃんと目を見て話を聞いて背中を押せるとにかく理想的な人。見習いたくなるような優しさと懐の深さとちょっと変わってるところと元気なところにタカシもマモルもそしてユーゴも、みんな救われてるんだよ。
アヤさんが聖さんで良かった!った心の底から思ってる。再演が決まってアヤさんだけは…頼むから続投を…!と願っていたので本当に嬉しかった。誰にでも分け隔てなく接することができて、多分それが昔から普通でそれでいて天才的に空気の読める人だなって感じてる。必要なことを相手にとって必要で響く言葉で優しく届けることができる。M10 昔々あるところに毒リンゴが大好きでずっと歌ってた。すごく大きなメッセージが含まれているのにこの曲単体だけで聞くととっても変わった曲っていう絶妙さ加減がめちゃくちゃ好き。ずーっと口ずさんでいたい気持ち良い曲だし私はトマトって元気もらえる。再演の悪い王妃の似顔絵も可愛くて好き。タカシとマモルもそうだけど、見ている客もアヤさんにたくさん元気と勇気をもらっていたんだ。1人になったタカシに「私たちは星座になれるんだよ、他人でも誰かと一緒に光って大きな星座に」と言葉をかけるけど、この言葉個人的にめちゃくちゃ響いてて。飛び込める誰かがいてくれることの大切さとか大きさを感じた。聞けば聞くほど色んな意味が含まれているのが感じられて、普段過ごしていて自分の感情に押しつぶされそうになるときもアヤさんの言葉に1人じゃないんだよ、って救われた。アヤさんの存在の大きさが改めて染みた。アヤさんありがとう〜〜


タカシのそばで色んな人生を教えてくれる女性たち。つるちゃん(剣幸さん)とふーちゃん(彩吹真央さん)。 タカシの障害を理解してるからできる距離の取り方をする高野先生、自分の人生を美しく生きていくローズ、現実をストレートに突きつけてくる関西のおばちゃん、タカシの悩みを紐解くような魔法の言葉をくれる優しいおばあさん、そして母さん。全く違う人を演じている中に、1人の人が演じる意味がちゃんとある、この作品の深さとタカシの障害の特徴を良く掴んでて、そしてまた剣さんと彩吹さんでまた違うキャラクターで作品の色が変わる。それは雰囲気みたいなものもあるけど受け取る感情の色のようなものも変化して。剣さんがいることによって原色に近い色になったり、彩吹さんがいるとパステルカラーのような色になる。こういう曖昧に受け取る感じもトマトらしくて好きなんだよな。
個人的に今回めちゃくちゃ刺さったのがローズだった。ローズの孤独さとタカシの孤独さって違うようで似ていて、そう感じるのは外からみているからで。それも全てわかった上で「普通の幸せ"私たち"にはこない」とタカシに言葉をかける。2人の間にしか理解できないものがそこにはあって、タカシとローズの間には私には見えない別の世界が見えた。ローズは自分の人生を大きく生きていて今もなお薔薇を咲かせてる。最後、タカシの掌に薔薇の花びらが乗ったようにみえて。これはタカシにとって大事な時間であり、言葉にしてはいないけど自分に自信をくれる花びらだったんじゃないかなってそう感じてた。ローズ、女性が演じてるのに男性にも見えて男役さんのすごさ感じたし何より綺麗!男性の綺麗さと女性の綺麗さ合わせ持っててそれでいて強いの!ローズ、初演の5割増しくらいにキャラクターが剣さんも彩吹さんも濃くなっててより普通とは違う世界の演出で好きでした。
そして剣さんの母さん、スカートシワだらけなんだよね。タカシを殴りそうになって必死に堪えて椅子を叩いてスカートを握りしめるの、こうやってタカシに手をあげないように必死に耐えた数があのスカートのシワの数になったのかなって思うともう限界だったのが言葉だけじゃなく伝わるのが辛かったなあ。日本人って曖昧な表現が多い文化だからこそ、全てにおいて断定的な数字で答えてって酷なんだよな。"ちょっと"とか"だいたい"とかそういう概念がないの。それだけではないけれど、それも母さんが壊れていってしまったひとつの原因なことがよりはっきり伝わってしまって。もしタカシが日本に生まれていなければもう少し長く母さんといれたのかもしれないな、とか考えた。手話を習ってる人の話を聞いて、手話の世界でも曖昧な表現ってないんだって、ちゃんと数字で表さないと伝わらないっていうのを聞いて会話するだけでも精神的に気を使うことが多いんだろうなって思った。生まれてからずっとその生活ならなんてことないんだけど、曖昧な表現が許されている中でいきなり目に見える、わかる数字で答えてって世界に来たら疲れるもんな。そんなことを青い木立の中を降ってくる正六角形の雪の結晶を眺めてるタカシを見ながら考えてました。
あと個人的に大好きだったのはユーゴの強火おたくのつるちゃん。空笑いするADを睨んでたの忘れない。最高、好き。


そして最後にタカシ。
初演のときよりドライで、マモルが変わったからタカシも変わったんだろうなって感じたし再演をやる意味を感じたタカシでもあった。
世間に対して完全に"諦め"ているのを感じていたからスタート地点がマイナスからのスタートで、だからこそより機敏に心の動きが見えたし最後の笑顔の終着点までの成長が手に取るように感じられて平間くんってすごいな、と純粋に感じた。そして改めて平間くんのお芝居が好きだなとも思った。今まで平間くんの作品を見ながら今日も違うなって思いながら見ることが多くて、それこそが舞台の面白いところであり、楽しいところであるのは十分わかっているんだけど、それとはまた違う意味でIndigo Tomatoは全公演全然違う公演になってた。それをリアルに肌で感じながら観劇できたことがすごく良い経験になった。これが平間壮一が作りたかった『Indigo Tomato』の世界なんだろうなって感じてた。
それぞれのキャラクターとの絡みとか心のちょっとした動きが毎回違ってだからこそ面白くて、特にマモルとの呼応はすごかった。マモルの表に出す感情が公演を重ねるごとに前に前に出てきてたし、それを表に出させていたのはタカシの言葉の言い方とか仕草とかだったりしたから、2人のシーンはほんとに見応えがあった。素直で思ったことをそのまま口にするタカシだからこそできることであり、今までずっとずっと心の中で我慢してしまってきた出しきれない感情をあそこまで前に出させたのは平間くんのタカシのおかげだった。簡単な言葉になってしまうけど、本当にすごかった。圧巻だった。 Indigo Tomatoのタカシに関しては"平間くんの演じるタカシ""平間くんだからこそのタカシ"とかではなくて純粋に"タカシ"としての存在になる。色々書いたけど根本的にはこの思いは初演から変わらない。最初にピンスポットを浴びて円周率を唱える姿はどこか平間壮一にも見えるしタカシにも見えるんだけど、数字と手を取れなくなった瞬間に誰でもないタカシになるの。だからここにいたのは平間くんではなくタカシなんだよな。だから円周率の暗記すごいなとかじゃなくてタカシにしか見えない道を辿ってる姿でその世界にはたくさんの壁があるけど全部を乗り越えて見えた先にあるもこは光なの。円周率の暗唱、タカシにとっては人生みたいなもので、今まで暗闇でしかなかったところからだんだん光が射してきて光に手が伸びた時、周りには自分を認めてくれる人がいて、隣にマモルがいることも知って、笑顔になれるのかな。物語の中では何も解決してないんだけど、タカシが前を向けたことで劇場を出たとき少しだけ外の世界がカラフルに見えるのはタカシくんの魔法なのかな。
タカシが笑顔になるだけで世界ってきらきら輝いて見えるんだ〜〜ってくらい、笑顔って素敵なものなんだって気づかせてくれた。 ほんとここまでタカシ!!って思わせてくれる平間くんってやっぱりすごいんだな。




Indigo Tomato再演、見ていて得るものがたくさんあったし再演する意味をすごく感じた公演だった。

個人的には平間くんの出身地である北海道で平間くん主演の作品を見れたこと、本当に大きくて嬉しくて大切にしたい思い出になった。

Indigo Tomato、初演の時は平間くんのことを好きになってから初めて最初からちゃんと触れるお芝居でもあったので思い入れは強いなって感じた。これからもどんな形であれ続いていく作品になるといいなあ。